住みたい街ランキングで不動の1位に君臨する吉祥寺。
シングル、DINKS、ファミリー、どの層からも圧倒的な支持を得ています。
近鉄百貨店は三越を経てヨドバシカメラに、駅ビルのロンロンはアトレに、ユザワヤはキラリナに、と時代の流れに合わせ変わりゆく街。
それでも人気を保ち続けているこの街には、残すべき大切なものはちゃんと残されています。
まずはこちら。
吉祥寺の代名詞とも言える「井の頭恩賜公園」
大正6年(1917年)に日本で最初の郊外公園として開園。
公園中央の井の頭池は、初めて江戸に引かれた神田上水という水道の水源でした。
湧き水口が7箇所もあったことに由来する七井橋から桜を眺めると、この時期はボートが数隻だけ浮かんでいます。
普段はローボート、サイクルボート、スワンボートの3種類から選べるのですが、桜の季節に向けて整備点検中とのことで、しばらくはローボートのみになっています。
ちなみにスワンボートには1台だけ眉毛のあるスワンがいるので、スワンボートに乗る際には目元を要チェックです。
そして、恋人同士ボートに乗ると別れるというジンクスがあることもお忘れなく。
揺るぎない愛があれば大丈夫。
橋から桜とは反対の方を眺めると、広い公園の向こうに大きな白いマンションが見えます。
3棟から成るヴィンテージマンションで、写真右から「井之頭パークサイドマンション」、「メゾン井の頭」、「井之頭第2パークサイドマンション」です。
部屋はリノベーションで自分好みの空間にできますが眺望はどうにもできないので、眼下に井の頭公園が広がるこのマンションの価値が、築40年以上経ても下がるどころか上がっていることには容易に頷けます。
アールストアでは過去に「メゾン井の頭1007号室」を掲載しています。
井の頭公園の最後は「井の頭弁財天」
徳川家光公により建立された社殿は大正13年に焼失し、現在の社殿は昭和2年に再建されました。
江戸の人々からは水の神、福の神、音楽や芸能の守護神として広く信仰されていたようです。
目で見て楽しむアートのセレクトショップ、「aRts STORE」をオープンできたことに感謝申し上げ、アートがもっと身近に感じられることを祈願して公園を後にしました。
公園を出るとすぐに「いせや」があります。
1年半前のリニューアルにより、かつての面影を少しだけ残し、老舗からモダンに変化しました。
取材をした月曜日は公園店が定休日のため、すぐ近くにある総本店へ。
こちらも店舗は新しくなれど、焼き鳥1本80円を貫いている姿勢に頭が下がります。
老舗の美味い店のビールは、生がサッポロで、瓶はサッポロラガーである、という持論があるのですが、いせやもそうです。
(その他ビールメーカー関係の皆様、一個人の嗜好の話ゆえお許しください。)
サッポロ生ビール(中)500円、サッポロラガー(大ビン)500円。
自家製シューマイ(360円)も美味しいので、ビールとご一緒にどうぞ。
続いては平日でも行列の絶えない店、「さとう」
言わずと知れたメンチカツの有名店。
メンチカツ(220円)はもちろん美味いですが、並ばずに買えるコロッケ(140円)も美味しいのでオススメ。
同じ肉屋に並ぶなら、個人的には上野にある「肉の大山」の方が好みです。
お隣の賑わっている小さなお店は「小ざさ」
たった1坪で年商3億という、最中と羊羹だけを丁寧に作られている和菓子店です。
最中は白あんと小豆あんがあり、10個入りで705円。
羊羹は幻の羊羹と称され、1日先着50名様だけ買うことができます。
1本675円でひとり3本まで。
13年前の学生時代に友人とふたりで朝5時から並び、当時付き合っていた彼女やバイト先のインテリアショップに、ホワイトデーのお返しとして渡した記憶が蘇ってきました。
昭和26年のオープン以来、今でも早朝から行列ができるそうです。
誰かを喜ばせたいという思いとお時間のある方、クリックだけで多くのものが手に入る便利な世の中だからこそ、一度くらい朝から並んでその時間を楽しんでみてはいかがでしょう。
iPhoneの新機種発売日にアップルストアに並ぶそれとは違う感情がそこにはあるはずです。
老舗の流れに乗って、次は「金井米穀店」
大正13年築の粋な木造建築が異彩を放っています。
体に良い、農家にとっても良いお米のみを扱う三代続くお米屋さん。
「風呂ロック」が開催されていた銭湯「弁天湯」の向かいにあります。
昨年3月のリニューアルオープンより販売がスタートしたおむすびはお米の味を真っ直ぐに感じられます。
月ごとにお米が変わるおむすびは1個150円。
日によってはお昼過ぎに完売することもあるそうなので、おむすび好きはお早めに。
同じ昭和通り沿いには洋食レストラン「シャポールージュ」
昭和36年にレストランバンビとして創業し、平成2年のリニューアル時に店名を変更。
その名残で今でも店名の下には小さな字で旧バンビと書かれています。
こじんまりしたお店ですが3フロアあるので、お昼時に並んでいても待ち時間は少ないです。
16時までランチをやっているので、のんびり過ごしたい休日に重宝します。
これぞ洋食レストランな店内で、ランチコースは1,780円〜2,500円とリーズナブル。
1,000円未満のランチメニューもあります。
カフェやビストロだけでなく、たまにはこんな選択肢もあるといいですね。
でもやっぱりカジュアルなお店が好きという方はこちら。
「アムリタ食堂」
タイ出身のお母さん3人がシェフを務めるだけに、本場の家庭料理が味わえます。
トムヤンクンやヤムウンセンも外せませんが、鶏肉と豚肉をそれぞれオリジナルのタレに漬け込んで焼いた香ばし焼き(2品盛りS 1,200円)もぜひご賞味あれ。
毎週月曜日はフリーライブが開催されていることが多いので事前にご予約を。
気がつけば食の話が続きましたので、次でピリオドを打ちます。
吉祥寺で一番発信力があると思われるギャラリー「feve」のオーナー、引田かおりさんが経営するパン屋さん。
「毎日食べるパンだから」というキャッチコピーを掲げ、店内のショーケースには国産小麦を使用したパンがスタイリッシュに並べられています。
看板商品の食パンは3種類。
よつ葉バター30%+牛乳のリッチな食パン(420円)は、やさしい口当たりと程良い甘みでジャムやはちみつに良く合います。
食の話に終止符をと言いつつ、スイーツを忘れていたのでシメはこちらで。
「A.K Labo」
エディトリアルデザイナーだった庄司あかねさんが12年前にオープンしたフランス菓子店。
アメリカの最新の都市計画では半径400mの街が理想の規模とされているようですが、吉祥寺はその半径400mの中に行きたいお店が密集しており、さらに半径800mの範囲に広げると、井の頭公園も含むほぼ全ての吉祥寺の魅力が詰まっています。
しかしながらA.K Laboは例外で、駅から徒歩約15分という立地。
それでもまた食べたいと思わせてくれる、見た目も美しい本格派のフランス菓子たちがあなたを待っています。
食の話に続いては本業の住の話。
まずは「吉祥寺ハイム」
井の頭公園から見えた「メゾン井の頭」の向かいにある1971年築の三角形の建物。
特筆すべきはマンションと教会が共存していることです。
敷地内にはマンションより17年早く建てられた礼拝堂があり、レンガ調のタイル貼りになっている3階までが教会施設、4階から11階までが分譲マンションという構造です。
建物をぐるりと回ると見る面によって全くデザインが異なりますが、モダニズムの理念を感じます。
次は「潤マンション」
階段の入口に「潤」の文字があり、同潤会アパートのひとつかと思いきや違います。
1973年築のレトロマンションに蔦が絡んで味があります。
どちらもオーナーは申光烈(しんかんよる)さん。
建物に一目惚れして2部屋お借りした気持ちがよく分かります。
最後は「小倉ビル」
1987年築の古びたマンションが大規模なリノベーションによって、昨年12月にカフェ併設の路面店「マーガレット・ハウエル」として生まれ変わりました。
緑豊かな大きな公園の前というロケーション。
タイムレスでありながらも現代的な心地良いライフスタイルが体感できる空間です。
建物に続いてインテリア。
と話を進めていきたいところですが、終わりが見えなくなりそうです。
アールストアで不動産業に従事する前はインテリア業界で13年働いていましたので、スイッチが入ると止まらなくなってしまいます。
ということで、今回はいくつかセレクトしたお店を簡潔にご紹介。
店主の小林和人さんが提案するセンス溢れる生活用品店。
小堀修義さん、紀代美さんご夫婦の想いが詰まった生活雑貨店。
北欧アイテムや日本の工芸品が揃う雑貨店。
「つみ草」
作家の器と日本各地の手仕事道具を集めたお店。
日常で使いたい日本の職人による品々を扱うお店。
北欧家具を中心としたヨーロッパのビンテージ家具店。
150㎡の広いスペースを持つ北欧ビンテージショップ。
G-plan、Ercol等、1960年代のイギリス中古家具店。
吉祥寺の最後は「ハモニカ横丁」で締めくくり。
正しくは「ハーモニカ横丁」
戦後まもなく横丁に並ぶ小さなお店を、ハーモニカの吹き口が並ぶ様に例えたのが始まりです。
変わりゆく街の中で、変わらずに残されているもの。
変わらない日常の中で、気がつけば変わってしまうもの。
街も、人も、大切なものは同じ。
ついそれを見失いがちですが。